戸籍をたどる冒険のすすめ
こんにちは、粒です。
今日はまじめに、行政書士として感じていることを書きます。
ご家族の相続の手続きをやったことのある方はご存じかとは思いますが、銀行や不動産の相続手続きをするときに、必ず用意しなくてはいけないものがあります。
それは、
故人の生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本等です。
これは、故人の相続人を確定するために必要だからです。
自分の戸籍を取る機会も、パスポートを取るときくらいしか記憶にないような。しかも、それは現在の戸籍1通とれば済むわけで。
同じような方もたくさんおられると思います。
さて、生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍というのが必要なのはどうしてなのでしょうか?
簡単に言ってしまうと、戸籍は法律の改正によって様式変更されたり、結婚、離婚などして違う戸籍に移ることになったりするたびに、以前の戸籍に記入されていた出来事が削られてしまうため、漏れがないように連続して揃えて確認する必要があるからなのです。
例えば、養子縁組や、認知などの事項は、次の戸籍に編成されたときに省略されてしまって、実際認知した子供がいるのに、現在の戸籍ではそれが全く分からないということになります。
相続では、法定相続人全員の意思確認が必要なため(印鑑)、正確な法定相続人を確定する必要があるというわけです。
{配偶者と子供がいるような場合の相続手続きの場合、ゆうちょなどでは婚姻(初婚、未婚の場合は16歳)から亡くなるまでの連続した戸籍を求めています。ほかに子供がいるかどうかの確認だから、16歳からでいいということなのでしょう。}
公正証書で遺言を作るときも、同じように法定相続人を確定するために生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍を必要とします。
私は、自筆証書遺言をのこされるときにも、同じように戸籍を集めさせていただいております。というのも、せっかく遺言書をのこしたのに、ご本人が亡くなった後ご家族が知らなかった子供がいることが分かって遺留分請求などをされた場合、せっかくの遺言書の内容、故人の遺志を尊重することが難しくなってしまうからです。
でも、戸籍を集めるという行為には、それよりももっともっと大きな意味があることを実感するようになりました。
戸籍をたどる冒険には思いがけないドラマが詰まっている
私がお会いするお客様は、戦争を知っている方が多いです。
とはいえ、戦時中は子供ですし、もう70年以上も前のことですので、どこに住んでいたとか誰と住んでいたとかいうことはうっすら覚えているくらいのことがほとんど。
そのため、事前にお話をさせていただいたときには、それほど引っ越しもされていないので、集めても5通くらいなのかな。とか、簡単に集まるだろうな。と予想しながら戸籍を集め始めるのですが、とってもとっても出生までなかなかたどり着かなかったり、複雑な家庭状況だと聞いていたのに、戸籍はあっさり集まったりと予想はずれがしばしば。
さて、そうして集めた戸籍をお渡しすると、お客様の当時の記憶や、戸籍に記載されている人との思い出などが次から次へとあふれ出てきて、目をキラキラとさせてほんとに嬉しそう。
お客様の頭の中には当時の映像が鮮やかによみがえっていて、まるで子供に戻ったかのように次から次へといろんなエピソードをお話ししてくれます。
そして、皆さんとても喜んで、ゆっくり見ながら昔のことを考えたんだとか、あの人にはほんとにお世話になったんだよな。って思い出したんだよとか、声を聞きたくなって久しぶりに電話してみたんだよ。などと話してくれます。
私には、一つ後悔があります。
昨年、父を亡くしました。
行政書士の試験に受かって、開業するということを夏休みに帰省したら伝えようと思っていた矢先、元気だったのに急に倒れて、慌てて会いに行ったときには酸素マスク。もう、話もできないままでした。
父の死後、私は父の戸籍を集めました。
父は結婚後はずっと私が住んでいた家にいたので、結婚前に住んでいた父の実家の戸籍を取るだけだと思っていたのですが、実家のある県内を転々と移動していて、結局全部で戸籍が9通。揃えるのに1カ月半かかりました。
よくよく見てみると、昭和20年だけで、4回も転籍していました。
戦時中、戦後の大変な時に。
父の両親がまめな人だったのか、まじめな人だったのか。そこにはどんな事情があったのか、今となっては誰も知りません。父もそのことを覚えていたのでしょうか。
父が生きているときに、それを見せて聞きたかった。
戦争のことは、あまり話さない父でしたが、話好きでよく笑ってた父から、そんな昔話ももっと聞きたかった。
戸籍を集めてみませんか
いつかまた法改正や、データ化が進むなどしてこの出生から死亡までの戸籍を集める必要がなくなることもあるかもしれません。
でも、今現在はまだ相続発生時には必ず行わなくてはならないことです。
だったら、ご本人がいなくなってからではなく元気なうちに、ご両親のあるいはご自分の戸籍を集めてみてはいかがでしょうか?
そこには自分の知らなかったドラマが広がってるかもしれないし、それがきっかけで自分の死んだ後のことを考えたり話し合ったりできるかもしれません。
難しそうだなー。と思われるようでしたら、お気軽にコメントいただけましたら、対応させて頂きます(営業トークでございます)。
今日もお読みいただきありがとうございました(*^^*)